20220808

 

 最近、スリランカの政局不安と国家財政の破綻に伴い、日本を含む一部の西側メディアは、いわゆる中国の債務の罠を騒ぎ立て始めた。事実の真相を明らかにし、スリランカ危機の背景と現実を冷静に分析するため、2022年8月8日、日本華人教授会議と東京大学グローバル化中国研究拠点は共催で「スリランカ情勢と「債務の罠」の罠——「一帯一路」の行方を合わせて考える」と題する緊急討論会を開催した。

 

 

 討論会では日本貿易振興機構アジア経済研究所南アジア研究グループ長の荒井悦代氏が最初に報告した。タイトルは「スリランカの外貨危機―背景と実情」である。

 まず、中国とスリランカとの関係の発展過程と中国とスリランカとの協力の歴史を回顧し、具体的なデータを示しながら両国の協力は少ない予算で大きなメリットを得られたとの見方を示した。スリランカで最近発生した国内危機は新型コロナウイルス、ロシア・ウクライナ危機の影響もあるが、最大の原因はスリランカ政府の経済運営に問題があったとし、中国からの融資が膨らんで外貨が不足してデフォルトになったという西側メディアの主張については、事実とはいえず、きっかけに過ぎないと指摘した。スリランカの対外債務のうち最大の割合を占めているのは国際金融市場からの債務で70%に達しているが、中国は10%にすぎず、日本と同程度であることを具体的なデータを用いて説明した。さらに、2019~2021年の3年間に返済が迫った40億ドルの債務のうち、国際金融市場からの債務が占める割合は50%以上に達していた。

 荒井氏は自らスリランカを訪問して得た印象に基づき、中国人はスリランカ人から悪者扱いされているという西側メディアの報道とは裏腹に、スリランカ国民の目には、中国は気前がよく、友好的な新しい友人であり、怖いのはインドと米国だと指摘した。

 2人目の報告者は、東洋学園大学の朱建栄教授。タイトルは「ハンバントタ港99年運営権契約の再検証――「債務の罠」の罠を衝く」である。

 朱建栄氏はまず、ハンバントタ港開発の経緯を紹介。カナダ政府やデンマークなどの企業が同港に開発利用価値があると論証したが、インド洋の津波により開発への参加を拒否した。2007年にスリランカ政府が国外でパートナー探しを始めたが、米国もインドも拒否し、中国系企業が受注した。第1期工事は3年間で完了し、2010年以降はスリランカ港湾局が運営していたが、管理が混乱し、採算が合わなくなったため、中国港湾・招商局グループと契約を結び、3者共同で35年間運営することになった。

 2015年にスリランカで金融危機が発生し、米英の資本から受けた融資は返還期限が迫っていた。スリランカは日印に支援を要請したが実現せず、同港の99年の特許経営権と引き換えに中国に11.2億ドルの融資を提案し、中国政府の同意を得た。この取引資金は後に米英の債務返済に使われた。これによりスリランカは一時的に債務危機を回避した。また西側メディアが、中国が同港を軍港として使用していると宣伝しているのも事実ではない。契約書と企業誘致文書を真剣に解読したところ、契約書の冒頭説明で経済開発しかできず、軍事目的での使用は厳禁であることが分かった。
 最後に、「港湾の経営管理権限を外国が50年ないし99年請け負うのは国際的な常識であり、中国海軍もこれまでこの港湾を使用したことがない」と指摘した。続いて西側メディアが中国債務の罠を作り出した経緯を検証し、これが政治的意図に使われているのを実証した。米国とインドがスリランカへの融資を利用し、それによってスリランカを支配する特権を取るやり方に比べて、ハンバントタ港に関する中国とスリランカの協力は完全に平等互恵的であると主張した。


 

 3人目の報告者は拓殖大学の朱炎教授で、タイトルは「「一帯一路」の最新動向―コロナと米中競争の試練を乗り越えて」である。

 朱炎氏はまず、一帯一路建設以来8年間の成果を紹介。2021年末現在までに、中国は145カ国32の国際機関と210の協定や覚書を締結し、40カ国以上と国際産業協力協定を締結し、フランスや日本など14カ国と第三者市場協力協定を締結した。この背景のもと、中国と沿線諸国との貿易・投資は拡大を続けており、8年間の累計貿易額は9.2兆ドルを超え、中国の沿線諸国への直接投資は230億ドルを超えている。また、2015年にアジアインフラ投資銀行が創立されて以降、現在91カ国が加盟しており、さらに13カ国が加盟申請中で、228月までに32カ国182件のプロジェクトに358.3億ドルの融資を行ったという実績を紹介。中欧国際コンテナ輸送定期便(中欧班列)は2011年に運行を開始してから、累計5.8万便の列車を運行し、欧州各国に550万個のコンテナを輸送しているという。

 「一帯一路構想が実施されてから8年間、さまざまな人為的・自然的な困難を克服し、沿線諸国の強力な支持の下で成し遂げた成果は大きいと言える。これは一帯一路が世界の多数の国の共感を得たことを十分に物語っている」と締めくくった。

 東京大学グローバル化中国研究拠点の丸川知雄教授(経済学)も発言し、スリランカの債務危機や中国の一帯一路構想について自分の意見を述べた。

 緊急討論会には中日関係者150人余りが参加した。チャットでは多くのコメントが書き込まれ、すばらしく詳細で客観的な報告を高く評価し、とても勉強になったと感想が寄せられた。
                                                                                                    日本華人教授会議事務局提供


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