2021年116日午後、「未来に向けた新たな思考:共感、共創、共生社会の構築」をテーマとし、日本華人教授会議が主催、NPO日中学術交流センターが後援する国際シンポジウムがオンラインで成功裏に開催されました。

今回のシンポジウムは、現在、かなり不確定な社会環境の中で、人類がいかに勇気をもって挑戦に立ち向かい、問題を解決し、より明るい未来社会を構築すべきかを議論することが目的です。

シンポジウムは自然科学と人文社会科学という二つの分野を設け、それぞれ日中両国の学者、起業家、メディア関係者及び未来を担う若者たちを招待し、討論を交えました。参加者は5 Gや人工知能など次世代のデジタル技術や関連産業技術の形成と行方を検討し、経済社会活動や人的交流等々の問題について議論し、より良い「次世代社会」を創るために、様々な対策と解決策を提示しました。

シンポジウムでは、鹿児島国際大学の教授康上賢淑さんが司会を担当しました。日本華人教授会議の代表、山梨学院大学の教授熊達雲氏の開会の挨拶で日本華人教授会議を代表し、現在の世界情勢の不確実性に対して懸念を示しつつ、未来にも期待を寄せました。

今回のシンポジウムは三部に分けて行われました。

第一部の議題は「未来の社会に向けた共生的なイノベーション」です。早稲田大学の金群教授が報告会の司会を担当し、会津大学の程子学教授が討論の進行役を担当しました。

災害を防ぎ、持続可能な発展を遂げる未来社会を創るために、私達は如何に5 G及び人口知能を活用して技術革新を行うのか、また、如何にスマートシティとデジタル化を通じて生活方式を革新するかについて、国内外の専門家と関連分野の専門家から専門的な意見と提案が発表されました。

中国電信研究院の孫震強教授は「4 Gで生活を変え、5 Gで社会を変える」をテーマとして講演しました。孫教授はまず、中国における通信市場の規模を紹介し、教育、健康、金融、娯楽等の面において4 Gが人々の生活に与える変化及び5 Gがより多くの場面で産業、社会に与える影響を述べ、更に未来の6 G技術を展望しました。

富士通グローバルマーケティング部門の首席デジタル経済学者の金堅敏氏は、IoT時代における5 G向けの革新的な商用化について報告しました。5 G技術が注目されている理由について金氏は、超高速、超低遅延、多設備接続可能、省エネ、高い安全性等の特性を持っているからであり、IoT設備の大量増加に伴ってデータの爆発をもたらしたが、5 Gはデータのトラフィックに対して重要な技術サポートが提供できる点で、社会と産業界から注目を集めていると述べました。更に、日中両国の5 G垂直応用における異なる技術路線と実例を紹介し、5 Gネットワーク自体は技術の基礎のみを提供し、ユーザーに5 Gが予想する新しい価値をもたらすことを感じてもらうために最も重要なのは革新的応用であると強調しました。

会津大学の陳文西教授は「日常生活ゴミ減量の実践・感想~人類健康から地球健康へ~」と題して報告し、地球環境を維持し続けるためのゴミ処理方法と自身の実践を紹介しました。陳教授はまた、人類の現在の活動による影響は遠い未来まで続くが、現行の議会制度は現代の人々の考えのみを反映し、未来の人々にとっては非常に不公平であり、人々の長期的利益も確保するべきだと述べました。

農業企業家の宇野宏泰氏の報告テーマは「次世代に向けた農業革命」です。宇野氏は伝統的な農業栽培方法を中心として、有機栽培を積極的に取り入れ、農業の研究と経営改善に取り組んでいます。日本における農業が直面する問題点として、土壌の退化や異常気象による食糧危機、農産物の品質低下、加工業や飲食業の「請負型」農業等を例に挙げ、土地活性化の確保、優秀な人材の育成、社会意識の変革等の日本農業の改革方法を提案しました。

第二部の議題は「未来を担う社会人の抱負」です。武蔵野大学の欒殿武教授が報告会の司会を担当し、帝京科学大学の呂暁彤教授が討論の進行役を務めました。二人の教授は「未来社会の幕が開き始めています。新しい世代の人々は新しい思考と世界を一変させるエネルギーを持っています」と述べました。彼らは、革新こそが「次世代社会」へ繋がる無限の力であるとし、未来に対する展望を分かち合いました。

日本のフリージャーナリストの中島恵氏は「日本人の中国観、中国人の日本観」と題して報告しました。中島氏は日中両国国民の相互理解を深めるため、日中両国の社会と文化を観察し、紹介する本を何冊も執筆しています。数十年来、日中双方がお互いの印象がよくない客観的な原因と主観的な原因を分析し、日中間では、バイアスをかけて相手を観察してはいけない、普通の目線で交流を強化していくことこそ、お互いに対する印象を効果的に変えることができると指摘しました。そして、両国の国民における直接の交流と対話をも強化すべきだと呼びかけました。

愛知大学国際問題研究所客員研究員の曽根英秋氏は「駐在員から見た日本企業と中国企業、および未来への新思考」をテーマとして報告しました。曽根氏は日本の企業は擦り合わせ的な「グローズド・インテグラ型製品」が得意で、中国と米国の企業は組み合わせ的(労働集約的)な「オープン・モジュラー型製品」が得意であり、将来は日中双方が長所を持って短所を補い、革新的な思考を持つ人材を育成するべきだと述べました。

杏林大学の劉迪教授の報告テーマは「ポストコロナ時代における国際間の移動」で

す。劉迪教授は日本が国費留学生に対してビザを優先的に発給する現行の政策は「平等原則」に反すると指摘しました。更に留学生を受け入れることが最も重要な国際文化交流であり、日本政府は海外留学生のビザを優先的に発給し、順調に日本に入って学業を完遂できるように措置を講じるべきだと述べました。

早稲田大学社会科学部の4年生、鷹居知樹さんは「中国語は予期せぬ連続性と積極性を与えてくれた」という題で、自身の中国語を勉強する経験を共有しました。鷹居さんは中国語を勉強して中国と縁を結び、中国語を勉強することで、人との交流が好きになり、自信が持てるようになりました。そして中国をより深く知りたいと思い、2022年に中国へ留学する計画を立てています。

北京大学外国語学院MTI専門修士1年生の黄畅さんは「未来に向かって助け合う」というテーマで日本語の勉強と日本留学の経験を共有しました。黄畅さんは「第15回全中国日本語スピーチコンテスト」で優勝しました。学部時代から日本語の勉強を始め、2019年に交換留学生として日本に留学し、その後まもなく新型コロナウイルスに見舞われました。その中で日本人の友人に助けられ、日中間の「山川異域、風月同日」(:住む場所は異なろうとも、風月の営みは同じ空の下で繋がっている)という感動的な物語に共鳴しました。黄さんはこれらの経験を通して、人々が助け合えば、より明るい未来がきっと築けると深く信じていると語りました。

シンポジウムの第三部は総合討論です。鹿児島国際大学の康上賢淑教授が総合討論の担当役を務め、総括発言をしました。康上教授は、自然科学の急速な発展に対して、人文科学には自己束縛の要素が数多く存在し、人文科学自体の発展を妨げている、数世紀もの工業化と絶えず起こった戦禍が、地球環境を深刻に破壊し、すべての国家と民族は現在まさに「平等」に生存の危機に瀕している、人類はすでに本当の意味で同じ船に乗る「兄弟姉妹」になったと指摘しました。また現在の私たちが未来の子孫のために最も推し進めるべきことは、積極的で新たな思考と創造性で、自然科学と人文科学の融合、国家と民族の融合を促進することであり、世界中の国々が分かり合えば平和を守ることができ、互いに助け合って前進していくことを呼びかけました。これもまさに今回のシンポジウムの目的と趣旨です。

最後に拓殖大学の杜進教授は閉会の挨拶をし、今回のシンポジウムの新たな特徴をまとめました。(中国語原稿:劉書赫、日本語訳:馮瑶、日本語校正:網野)


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