日本華人教授会議主催WEBセミナー開催

「世界“最速”の都市化とスマートシティの実体」 

2021年626日、日本華人教授会議は「世界“最速”の都市化とスマートシティの実体」と題するWEBセミナーを開催した。講師に東京経済大学周牧之教授、富士通グローバルマーケティング部門金堅敏チーフデジタルエコノミストを迎え、中国の都市化とスマートシティ、及びその示唆などについて最新の研究成果及び実務経験に基づいて講演してもらった。アジア成長研究所の戴二彪教授は、このセミナーのモデレーターを務めた。

周牧之教授は「中国都市ランキングから見たメガロポリスの展開」をテーマに講演を行い、中国の三⼤メガロポリスや「中国都市総合発展指標」などについて話した。講演の中で周教授は、中国の台頭をもたらした要因として、グローバルサプライチェーンを前提とした輸出拡大と都市化を挙げた。

周教授は、中国国家発展改革委員会と国際協力事業団が共同で進めた中国都市化政策に関する政策研究プロジェクトで自ら責任者を務め、2001年に2つの提言を行った。それは(1)中国は都市化を推進すべきである(2)都市化推進にあたり大都市圏、そしてメガロポリス政策が必要、であった。周教授はこの二つの提言をもとに、将来、中国は珠江デルタ、長江デルタ、京津冀の3つの世界最大級のメガロポリスを形成すると予測した。

9.11事件、中国のWTO加盟そして中国でメガロポリス政策の議論をスタートした2001年を、ゲームチェンジの年、と周教授は位置づけた。講演では、2000年以降の中国経済に関して周教授はデータを通して、実質GDP5.2倍、輸出額が10倍に成長し、世界最大の輸出大国に躍り出たことを示した。

特に現在、中国の三⼤メガロポリスが国内GDP38%、貨物輸出額の68%、流動人口受け入れの63%を占めているという結果に対し、周教授は20年前に予測していたことが現実になったと述べた。

他方、周教授の研究チームは、中国の都市化を全体的に測るだけでなく、個々の都市の視点からも分析を行った。研究チームは、「中国都市総合発展指標」を発表した。この指標は、3つの大項目、9つの中項目、27の小項目、191指標からなるピラミッド構造になっており、ビッグデータ、統計データ、衛星リモートセンシングデータなどの新技術を用いることで、都市を総合的に数値化し、分析できるようにした。指標には、医療輻射力、製造業輻射力、IT産業輻射力、文化・スポーツ・娯楽輻射力などが含まれており、都市発展の特徴を客観的かつリアルに示すことを可能にした。

金堅敏氏は「デジタルの優位性を活かしたスマートシティの進展」と題する講演を行った。金氏によると、都市化に伴う様々な問題を解決するには、デジタル技術を用いて都市の問題を解決したり、新たな付加価値を生み出したりする「スマートシティ」の実現が必要だと指摘した。そして、スマートシティの4つのターゲットは、都市管理、市民サービス、生態共生、産業経済であると金氏は述べ、そのために必要なのは、データの標準化、オープン化、共用化、データ流通市場の整備であると主張した。

金氏によれば、いま世界に存在する約1,050のスマートシティのうち、中国が48%を占めており、2020年のスマートシティ関連世界市場規模(IT市場)1,144億ドルであったのに対し、中国は259億ドルであり、今後5年間でさらに15%成長する可能性があるという。

さらに金氏は、中国が2008年からスマートシティ政策を実施し、イノベーションを奨励し人材を育成してきたため、統一されたデータ基準の策定、データ管理局やデータ管理センターの設置、データを利用したサービスや付加価値の創出があったと説明した。その一例として金氏は車が交通ルールを守っているかどうかを確認する画像認識技術や囚人を追跡するための新たなツールなどを紹介した。

また企業とスマートシティの関連について金氏はBATH(Baidu,Alibaba,Tencent, Huawei)に代表される大規模IT企業群が現在スマートシティの発展を推進し、都市OS(スマートシティのコアの部分)を中心にそれぞれの分野で技術の進歩を図っていると述べた。

デジタル競争力の側面から金氏は「中国は技術の問題よりも発展レベルと政府のガバナンスの問題が、日本は技術の問題よりも企業のガバナンス問題がそれぞれ存在し、解決を図るべきである」と指摘し、「そしてデータ提供者の受益者としての価値向上やデータ利活用者の能力向上、大企業とベンチャー企業の協力によるエコシステムの構築、政府と民間企業の優位性を生かして相互協力すべきである」と提言した。(文:劉書赫、和紫章)

 


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