会報『東アジア論壇』十三号掲載の報告から

日本語教育の向上に貢献する― 全中国選抜日本語スピーチコンテスト

日本華人教授会議のメインイベントである 全中国選抜日本語スピーチコンテストは今年 で 13 回となり、本選は 7 月 17 日(火)、東京 日経ホールにて開催された。NHK、日本経済 新聞、中国新華社など中日の多数のメディアが 映像、紙面、ネットサイトでその盛況を取り上 げられた。

このスピーチコンテストは、中国の若者に日 本語学習の意欲を高め、日本への理解を深めて もらおうと日本華人教授会議が提案して、日本 経済新聞社、中国教育国際交流協会がそれに呼 応した形で 2006 年に第 1 回スピーチコンテス トが行われた。以降、毎年、スポンサーの募集、 演題を審議する準備会議、各予選へのメンバー の派遣、また本選の審査委員の選定と担当など、 精力的に取り組んできた。中国での参加大学が 200 校、参加者が 1 万人以上で、中国最大規模 のハイレベルの日本語スピーチコンテストと して成長してきた。

中国の大学の日本語学科では現在、同コンテ ストに出場し、予選、そして本選で上位入賞す ることが教育カリキュラムの中で大きな目標 となっているという。日本の独立行政法人、国 際交流基金が数年おきに実施している「日本語 教育機関調査」によると、中国における日本語 学習者数は 2015 年度調査の時点で 95 万 3283 人、2012 年と比べて 8.9%減少したが、依然と 世界でも最大の規模を誇っている。一方、日本 語教育を展開している中国の教育機関は 2115 校、2012 年より 17.5%増加、教員数は 1 万 8312 人、2012 年より 9.3%増加しており、教育内容 の多様化と少人数による教育水準の向上がみ られ、中国と日本の文化交流、経済協力、観光 などの人的交流の拡大を支える重要なファク ターとなっている。なお、英語学習重視の社会 的風潮の中で約 68 万人の大学生が日本語を学 んでいると言われ、華人教授会議がそのコアと なる大学生たちに友好交流のチャンスと教育支援をいかに最善の形で提供するかは毎年の 議題として検討している。

今年は中日平和条約締結 40 周年という節目 の年であり、両国の要人の相互訪問、来日中国 人観光客の急増を背景に、日本国内の対中国経 済の関心がこれまでになく高まった。第 13 回 全中国日本語スピーチコンテストは年頭に中 国側の平和友好条約締結記念行事の一つとし て指定された。2018 年 1 月 10 日、貴州大学に て準備委員会が開催され、日本華人教授会議担 当幹事、唐亜明氏の依頼を受けて教授会メンバ ーの呉暁林氏が会議に出席した。共同主催者と して日本側から日本経済新聞社専務執行役員 竹岡倫示氏、電通中国事務所職員、中国側から 中国教育国際交流協会副秘書長、日本担当者、 また中国側協力者である中国教育部高等学校 外国語言文学類専業教学指導委員会日語専業 教学指導分委員会中国日語教学研究会の新旧 会長・主任(大学教授)、8つの地域ブロック 会場主催校の責任者などが出席した。主催者三 者がそれぞれ今回のスピーチのテーマ案を事 前に多数、用意し、席上で議論を重ねた。そし て「日中平和友好条約締結 40 周年に思うこと -新しい時代、新しい交流」、「AI(人工知能) で私たちの生活はどう変わる?」の2題を共通 テーマとして選定した。

2018 年の地域ブロック予選会場と主催校は、 北京ブロック(主催校中国対外経済貿易大学)、 華北ブロック(天津・同外国語大学)、東北ブ ロック(長春・吉林大学)、華東ブロック(杭 州・浙江工商大学)、華南ブロック(広州・同 外語外貿大学)、華中ブロック(武漢・華中師 範大学)、西北ブロック(西安・同外国語大学)、 西南ブロック(貴陽・貴州大学)であった。5 月から一ヶ月かけて中国の 8 会場で予選を行 い、各会場の優勝者が 2 名ずつ、計 16 名、東 京に集まり、本選に挑むという従来の形を踏襲 し、日本で行われる本選まで勝ち進んだ選手は、1週間ほど日本に滞在し、実際の日本を自分の 目で確かめる日程も継承されることになった。

実際の中国選抜予選は、5 月 5 日長春・吉林 大学会場を皮切りに、全国の 8 会場にて順次行 われ、6 月 2 日、北京、対外貿易大学を持ち、 全ブロックの予選が終了した。各ブロックの審 査委員会に教授会メンバーが 1 名、派遣され、 副審査委員長を務めた。第 13 回のスピーチコ ンテストには 234 大学、延べ 1 万 8 千人が参加 し、参加校と参加者が共に去年を上回った。各 ブロックから梁夢宇(吉林大学)、陳 金金(大 連大学)、周 佳(蘭州大学)、兪露(西安外国 語大学)、崔玥盈(上海外国語大学)、宋渝(華 中師範大学)、邱子倩(天津外国語大学)、楊春 暁(河北大学)、阮琳榕(厦門大学)、喩敏政(広 東外語外貿大学)、鄭安乇(西南科技大学)、王 菁(北京外国語大学)、張鴿(北京理工大学)、 陳沫言(湖南大学)、田月然(重慶師範大学)、 蒋心(上海理工大学)など 16 名の選手が予選 を勝ち抜き、東京での本戦に臨むことになった。

第 13 回スピーチコンテストの本戦は 7 月 17 日午後、4 時間の熱戦を繰り広げ、審査委員会 には東京外国語大学学長、日本語教育学会副会 長、国際交流基金日本語国際センター所長、中 国側大学教授などが加わり、華人教授会メンバ ー2 名(唐亜明・梁春香)が審査委員を務めた。 中国の若者の考え方や視点を知るための貴重 な機会と捉え、多くの日本の方々が駆けつけて くれ、会場からは温かい励ましの拍手が送られ た。

優勝したのは上海外国語大学の崔玥盈さん、 準優勝は広東外語外貿大学の喩敏政さんと北 京外国語大学の王菁さんだった。JFE 特別賞は 阮琳榕(厦門大学)、日本航空特別賞は邱子倩(天津外国語大学)が受賞した。昨年に続き、 今年も来場の聴講者に投票いただく「会場特別 賞」も設けられ、「最も印象に残ったスピーチ」 と「最も印象に残った質疑応答」は共に崔玥盈 さんが選ばれた。

スピーチコンテストの翌日、選手代表団の皆 さんは中国大使館を表敬訪問した。また、名古 屋大学や JFE などを訪問し、八日間の日程を終 えた。

第 13 回全中国選抜日本語スピーチコンテス トは、協賛各社、関係者の皆様のご支援、ご協 力のもと、成功裏に終了した。2019 年の大会 に向けて、華人教授会議は、さらに積極的に関 与し、日中両国の関係発展に貢献するよう、決 意を新たにするところである。 (文責:呉暁林・沈国威)


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