日本華人教授会議主催ウェブ・セミナー・シリーズ
「大統領選が間近に迫った米中関係をめぐる緊急討論」趣旨説明
日本華人教授会議代表宋立水
(明治学院大学教授)
2020年8月22日
近年の米中貿易紛争が一服にあるのではないかと観測した今年に入ったところ、トランプ政権は各分野において、毎日のように一斉に対中圧力をかけるような動きが増えてまいりました。
2020年7月23日、ポンぺオ国務長官は、ニクソン記念図書館で演説し、対中「新冷戦」を呼びかけました。
さらに、トランプが米中関係についてデカップリング(分断)という発言もしました。
いま、米中関係はヒューストンと成都にある米中両国の総領事館が相次ぎ閉鎖されるほど、国交正常化以来の危機の状態に陥っています。
米国は、ソ連との冷戦時代に中国を「準同盟」のような関係と見ていました。
冷戦崩壊後、クリントン大統領は、対中関係を「戦略的パートナシップ」と表現しました。
その次の大統領を務めたブッシュジュニアは対中関係を「戦略的競争相手」から「責任ある利害共有者」へと変えました。
オバマ政権では、中国を「ヘッジ」と「関与」によっての「利害関係国」にする考えを持ちはじめました。
そしてトランプ政権は、ワシントンのおよそ四半世紀来の対中アプローチを転換し、中国を「大国間競争」もしくは「戦略的競争」として捉える局面に入り、集団的対抗(collective balancing)、包括的圧力(comprehensive pressure)、体制転換(regime change)のいずれかの戦略を様々な分野において一斉に採るようなりました。11月の大統領選に近づくに連れ、米中両国の関係は一段と緊迫すると予測(よそく)されます。
人類社会は様々な人種と民族が、独自の歴史経路と生活環境の中、多様な宗教、価値観、社会組織及び国家形態を形成しました。
多様性の国際社会は、「競争と連帯」及び相互尊重の「平和共存」という文明へと進む知恵が今ほど試みされている時は今までになかったでしょう。
米中関係は、現代国際関係において最も重要な二国関係であるという認識は普遍的な常識であります。米中関係の行方は、米中両国だけではなく、国際経済、国際政治及び世界安全の行方に対して重大的な影響を与えています。対抗的ではなく予期可能な安定的な米中関係は、有効なグローバルガバナンス体制の必須条件と言えるでしょう。
世界の二大経済大国である米中両国の緊張が高まっている今の時期、「新冷戦」の回避、そして「熱戦」に発展させないために両国はどうすべきか? 間違いなく重要な課題でありますが、究極的には、世界はこれから「協調」と「対抗」のどちらの方向に向かうべきか?という選択の課題になるだろうと思います。
そして、日本を含む世界の主要国は米中対立にどう対応するかによってこれからの世界は大きく変化していくでしょう。
これらの喫緊(きっきん)の問題を議論するために、日本華人教授会議は【米中関係の現状と将来:大統領選まで90日間に迫った緊急討論】ウェイブ・セミナー・シリーズを企画しました。
本日のウェブセミナーが予定されているのは一時間半程度の短い時間でありますが、講演者と討論者の先生方のご意見が皆さまに大いに示唆を与えてくださることを期待しております。