奥田碩氏「日中関係のさらなる発展のために」

「日中関係のさらなる発展のために」

経団連会長 トヨタ自動車(株)会長 奥田碩

(はじめに)

 ご紹介をいただきました奥田でございます。

 まず、はじめに、日本華人教授会議が1周年を迎えられましたことを、心からお祝いさせていただくとともに、本日のシンポジウムにお招きをいただき、お話をさせていただく機会を頂戴しましたことに、深く感謝申し上げます。

私は、本日のテーマであります「日中共同知の構築」が、これからの中国、日本の両国にとって、もっとも必要ではないかと考えておりまして、そのための第一歩は、お互いの国に、相手国のことを深く正しく知っている研究者や知識人を増やしていくことではないかと思います。 そういう意味におきましても、この「日本華人教授会議」はきわめて大きな意義を持つものであると思います。このような取り組みを通じまして、お国に一人でも多くの、本当の意味での「知日派」の知識人が増えることを期待しておりますし、本日の私のお話が、そのために、わずかなりともお役に立つのであれば、望外の喜びとするところであります。

 それでは、まずは私どもの会社の中国ビジネスにつきまして、現地生産の展開を中心に、簡単にご紹介してまいります。

1.トヨタの中国戦略

(トヨタの海外展開と基本的な考え方)

 ご承知のとおり、自動車産業は国境を越えたグローバルなビジネスであり、国籍にかかわりなく、全世界を舞台に各社がしのぎを削っております。

昨年、トヨタ自動車にダイハツと日野を加えたトヨタグループでは、全世界で678万台の車を販売いたしましたが、国内販売が231万台なのに対しまして、海外販売は448万台に達しております。さらに、トヨタ単独だけでみますと、全世界の販売607万台のうち、日本国内は172万台に
過ぎませず、残りの435万台は日本以外の国での販売となっておりまして、その販売先は140カ国以上に及んでおります。

加えて、日本国内のマーケットはかなり成熟しており、今後大きな拡大は期待できません。したがいまして、今後の企業の成長、発展のためには、世界戦略、とりわけ成長市場を中心とした世界戦略がなにより重要であると考えておりまして、現在の世界シェアは11%程度でありますが、これを今後さらに伸ばしていきたいと考えております。

 生産という面におきましても、成長市場を中心とした世界戦略の重要性に変わりはありません。私どもは、グローバル展開における基本戦略として「消費地立地」の考え方を採用しております。すなわち、その国で売れる商品はその国で作る、現地生産を中心とした戦略でありまして、昨年末現在で、26の国と地域に46ヵ所の海外生産拠点を展開しております。 その結果、昨年の海外販売435万台に対しまして、日本からの輸出は184万台にとどまっておりまして、海外販売の6割近くが現地生産車という算になります。

 自動車という商品は、消費財としては大型であり、輸送にコストがかかるという点だけではなく、それぞれのマーケットにおける商品のニーズ、お客様の嗜好が多様であり、これに適切に答えていくためにも、売れるところで作ることが必要になってまいります。

さらに、それに加えまして、現地生産によってそれぞれの国に新たな付加価値と雇用を創出することによりまして、各国経済の成長、発展に貢献していくことが、結果として各国の自動車市場を拡大することにつながるという、好循環を生んでいきたいと考えております。こうした理念が、トヨタが消費地立地を進める理由なのでありまして、決して、人件費が安いからとか、貿易摩擦が起きるからといった理由で現地生産を選択しているのではありません。むしろ、そのような考え方による現地生産は、おそらくは、あまりうまくいかないのではないかと思っているところであります。

(トヨタの中国戦略)

 さて、成長市場を中心とした世界戦略を考えるにあたりまして、もっとも重要なのが中国市場であることは、明らかであります。

 いまさら申し上げるまでもありませんが、めざましい経済発展を続ける中国は、すでに自動車の一大マーケットとなっております。そのうえ、中国の自動車市場は、1998年には約170万台でしたが、2002年には約340万台、2003年は約450万台と、予想を上回る急成長を遂げており、今後もさらに大きな飛躍と発展を期待することができる有望市場であります。世界の自動車メーカーは争って中国ビジネスを拡大しており、私どもも同様、積極的に投資を行い、現地生産と販売を拡大していきたいと考えております。

(具体的な事業展開)

 具体的な取り組みをご紹介いたしますと、私どもは1980年代の半ばから90年代初めにかけて、瀋陽の金杯客車への技術供与や、瀋陽技能工学校の設立、あるいは北京での自動車教習所の設立など、まずは自動車産業、自動車市場の基盤整備から取り組みを進めてまいりました。日本における
私どもの経験からも、まずは自動車の運転技術の向上・拡大や、自動車の点検・整備や修理にあたるメカニックの養成といった基盤整備が、新たな市場には必要であると考えたからであります。

そしてその後、まずは部品生産事業から準備を始め、1995年に天津に中国国産化技術支援センター、1996年には天津汽車との合弁で天津豊田汽車発動機有限公司を設立し、1998年にエンジンの生産をスタートいたしました。

それに続いて、いよいよ完成車の生産に段階を移し、2001年には成都で四川旅行車との合弁でコースターの生産を、2002年には天津一汽夏利との合弁で、小型乗用車「VIOS」、中国名では「威馳(ウェイチュウ)」と申しておりますが、その生産を開始したのであります。このように、トヨタは早い時期から、段階を踏みながら中国市場との関わりを深めてまいりました。このような取り組みがあればこそ、近年になって矢継ぎ早に中国での取り組みを加速させることができるのだと考えております。

 具体的には、2002年8月には中国第一汽車集団公司との間で包括的合作協議書に調印し、さらに昨年4月には4車種の共同生産について契約いたしました。具体的には、昨年秋から来年春にかけまして、「ランドクルーザー」および「ランドクルーザープラド」をあわせて年間15,000台、「カローラ」を年間30,000台、「クラウン」を年間50,000台、それぞれ生産・販売を開始しようというものであります。

 あわせて、この3月には、長春に「クラウン」のエンジンを生産する合弁会社を、天津にプレス金型の合弁会社を設立しております。

 また、それに先立つ2月には、広州に広州汽車集団との合弁でエンジン生産会社を設立し、2005年から生産を開始する予定としております。ここで生産されたエンジンは、全量を日本向けに輸出する予定でありまして、中国には市場としてだけではなく、日本向けの部品・コンポーネントの
供給基地としても高い期待を寄せているところであります。 このように、近年のトヨタは中国事業に次々と思い切った手を打っておりまして、いかにトヨタが中国を戦略的に重要と位置づけているかをご理解いただけるものと思います。

(植林プロジェクト)

 ビジネスの話以外にも、ひとつご紹介したいと思います。それは、中国科学院などと共同で、河北省で推進しております砂漠化防止の植林プロジェクトであります。

これは、トヨタの社会貢献活動の一環として、2001年4月からスタートさせたものでありまして、この3月に第1期を終了いたしました。引き続き第2期として、2007年3月までの3年間取り組むことといたしております。第1期には、約1500ヘクタールの植林を行い、関連の研究を
実施いたしました。その結果、砂の飛散量の低下や、地温上昇の抑制などが確認されております。第2期におきましては、さらに約1000ヘクタールの植林に取り組みますとともに、砂漠からの回復後における経済の自立と持続的発展に向けて、薬草や果樹などの栽培技術の研究などにも取り組んでいく予定であります。

 私ども以外でも、たとえば王子製紙さんは、中国での植林に関しまして、人材育成や技術支援などの協力を実施しておられるのをはじめ、ベトナム国境近くでは商業植林にも取り組んでおられます。また、わが国経済界をあげての取り組みとして、日本経団連におきましても、1998年11月に
中国委員会の下に植林協力部会を設置し、2001年3月には重慶で環境植林協力プロジェクトをスタートさせておりますが、ここでも、王子製紙さんが中心的な役割を果たしておられます。

 このような取り組みは、のちほどお話し申し上げますが、日本の産業界が環境問題、環境技術、環境ビジネスを重視していることのあらわれであるとご理解いただければ幸いに存じます。

2.新ビジョンと東アジア自由経済圏構想

 ここまでは、トヨタの中国戦略についてご紹介してまいりましたが、ここからは、わが国産業界全体からみた日中関係につきまして、いくつかお話し申し上げたいと思います。 わが国の一部には、さすがに下火にはなってまいりましたが、それでも依然として「中国脅威論」や、短絡的な人民元切り上げ論などがみられるようでありますが、そのような受け身の発想からはなにも生まれないということは、わが国においてもほぼコンセンサスが得られていると申し上げてもよろしいものと思います。

中国はすでに、日本にとって大きな市場であり、投資先でもあります。中国の経済発展は、わが国企業にとっても大きなビジネスチャンスなのでありまして、日中両国は、未来志向の、前向きで開かれた関係を構築していかなければなりません。
 そして、両国は、そうした良好なパートナーシップのもとに、2つの大きな課題に共同で取り組んでいくことが求められると思います。それが、両国経済、さらには世界経済全体の活性化と成長につながるのであります。

(東アジア自由経済圏構想の重要性)

 第1の課題は、両国のパートナーシップが、大きな成長ポテンシャルを持つ東アジア経済の基軸となって、米欧に並ぶ世界経済の一極を形成していく、ということであります。日本経団連は2003年1月に、「活力と魅力溢れる日本をめざして」と題する総合的な政策提言、いわゆる「新ビジョン」を発表いたしましたが、その中で、東アジア自由経済圏の形成を提言いたしております。

 ご承知のとおり、この5月1日、東欧・中欧と地中海の10カ国を新たに加えて、25カ国による拡大EUがスタートいたしました。これに対しまして、東アジアでも実態としては地域経済圏の形成が進みつつありますが、制度的な枠組みの構築は実態に較べて立ち遅れているように思われます。

現在、国際社会では、2国間のFTA、EPAの交渉や締結が非常に活発に行われております。自由貿易が拡大することは、それ自体は各国経済、ひいては世界経済全体にプラスでありますが、東アジア諸国と欧米とのFTAが相次いで締結されれば、各国企業は他の東アジア諸国とのビジネスにおいて、欧米企業に対し劣位に立たされるほか、地域としての脆弱性を克服できないといった問題が生じることが懸念されることも、一面の事実であります。

すなわち、東アジアの各国は、域外諸国とのFTA締結の前段階として、まずは域内における制度的な枠組みの整備を急ぐ必要があると思います。

それにより、この地域に自由経済圏を形成し、アジア全域のハブとしての活力と競争力を維持・強化することができれば、そこに生まれるビジネスチャンスも、きわめて大きなものとなることは、想像にかたくありません。

さらに、域内におけるビジネス上の障壁の撤廃やインフラの整備が進めば、取引コストは劇的に低下し、より強固なバリュー・チェーンが構築されて、域内企業の生産性や競争力が著しく強化され、域内各国が全体として成長、発展することが期待できると思います。

(日本に求められる取り組み)

 そのためには、日中両国が東アジア自由経済圏構想の実現に向けてリーダーシップを発揮するとともに、それぞれの国における課題に取り組むことが必要となると考えます。

 日本におきましては、申し上げるまでもなく、産業構造の高度化に引き続き精力的に取り組むとともに、国内市場の開放政策を積極的に推進する必要があります。とりわけ、農産物市場の開放につきましては、思い切った踏み込みが必要な時期に来ているものと思います。

また、外国人に開かれた社会を実現することも、日本の大きな課題であると思います。

この点におきましては、日本政府は、留学生10万人計画の達成や、優れた人材の受け入れに意欲を示すなど、一応積極的な姿勢を見せてはおります。 しかし、在留資格制度の要件や制約が依然として厳しいことや、一部の留学生が引き起こした犯罪事件をとらえて、留学生の入国を制限するかのような動きがみられるといった実態をみますと、わが国における「外国人に開かれた社会」の実現は、まだまだ掛け声だけと考えざるを得ません。

 しかしながら、日本がこれからも経済・社会の活力を高めていこうとすれば、多様性のダイナミズムを生かすことが必要不可欠であり、そのためには海外の人の力を借りなければならないことも、間違いのないところではないかと思います。そのような考え方に立ちまして、日本経団連は先月、「外国人受け入れ問題に関する提言」を発表いたしました。
 ここで、その内容を詳しくご紹介することはできませんが、この提言の検討にあたりましては、昨年11月に発表いたしました「中間取りまとめ」に対しまして、日本華人教授会議から、本質的かつ的確なご意見と、暖かい激励を頂戴いたしました。この場をお借りして、あらためて深く御礼
申し上げたいと思います。

 もう一つ日本にとって重要なのが、日本を訪れる観光客の増加であります。政府は、2010年に外国人観光客を1000万人と、現在から倍増させようという目標のもとに「ビジット・ジャパン・キャンペーンを」展開しており、「観光立国」は、日本の将来に向けて非常に重要なテーマであります。
 しかし、これは政府の掛け声だけで進んでいくような簡単な話ではありません。日本が海外の方にとって訪れてみたい国、気持ちよく滞在できる国となっていくために、政府や自治体、地域の取り組みはもとより、国民一人ひとりが意識を変えていく必要があるのではないかと思います。

(中国に求められる取り組み)

 東アジア自由経済圏構想の実現に向けて、日本の取り組むべき課題をいくつかご紹介してまいりましたが、中国におかれましても、アジア地域全体の経済発展を牽引すべく、さまざまな国内課題に精力的に取り組まれているものと承知いたしております。

具体的には、国有企業の経営の近代化や、農村部における雇用問題、あるいは不良債権問題などの金融システムの改革といった諸課題であります。

私たちは、このような課題に前向きに取り組んでおられる中国政府当局に対しまして、深い敬意を表するものであります。今後、中長期的な観点から、国際金融市場における通貨のあり方につきましても、検討が進められるものと考えております。

また、申し上げるまでもなく、中国が自ら一層の開発を進め、経済発展を実現していくことは、アジア全域の経済発展にとっても重要なファクターであります。とりわけ、中国がいま開発を進めておられる東北三省は、人材や資源も豊富であり、昨年の秋に温家宝首相とお会いしたときにもお話がありましたので、日本経団連はじめ日本の産業界としても、大いに関心を寄せてまいりたいとお答えいたしました。また、東北三省は、トヨタにとりましても、先ほどもご紹介いたしましたとおり、かねてから瀋陽の金杯客車への技術供与などを行うなど、たいへん縁の深い土地であります。

今後も、先ほど申し上げましたように、クラウンの車両とエンジンの生産を長春で行う予定といたしておりまして、引き続き、この地域に注目していきたいと考えているところであります。
 いっぽうで、日本の産業界が中国に積極的な投資を行い、ビジネスを展開していくなかで、私どもにも現場からの実務的な要望が届いてきております。たとえば、模倣品や海賊版などに代表される知的所有権の問題や、売掛金の回収に手間取るといった商慣行の問題などであります。このような問題につきましても、ビジネス環境の改善という意味で、中国当局の適切な取り組みをお願いしたいところであります。

3.環境・エネルギー問題への取り組み

 東アジア自由経済圏構想の実現に向けた取り組みと並んで、日中両国がそのパートナーシップのもとに取り組むべきもう一つの重要課題が、環境問題への取り組みであると思います。

 もちろん、環境・エネルギー問題は全人類に共通の課題であり、世界中すべての国、企業によって取り組まれなければならないテーマでありますが、とりわけ、高い成長ポテンシャルを持つアジア諸国において、これから産業が発展を遂げていく上においては、エネルギー消費の増大と環境への影響の増大が、大きな制約条件となってくることは、十分に予想されます。
 世界のエネルギー需要におけるアジアの割合は、2010年には26%に達する見込みであり、さらに2020年には30%になるという試算もあります。

エネルギー資源の確保と消費エネルギー量の抑制が、きわめて重要な課題となってくるのであります。また、アジア地域におけるエネルギー・セキュリティという観点も、欠かすことはできないものと思います。

 この問題における日中両国の果たすべき役割の大きさは、改めて申し上げるまでもないものと思います。時間も限られておりますので、詳しくは申し上げませんが、省資源・省エネルギー技術や代替エネルギー技術の開発と導入、新たな採掘源の探索、資源の安定的な確保に向けた国際協力関係の構築などに、両国がイニシアチブを発揮していくことが必要であると考えます。

また、地球環境問題への取り組みも、きわめて重要な課題であります。

さきほど、中国における植林事業についてご紹介いたしましたが、地球温暖化防止への取り組みは、全人類に共通の課題となっております。

今後、アジア各国が産業化を進めていくと同時に、温暖化ガスの排出を抑制していくことは、非常に難しい課題でありますが、しかし、これは人類の未来にとって、避けては通れない問題であります。

私は、この問題につきましては、日中両国が強力なパートナーシップのもと、アジア地域におけるリーダーシップを発揮していくことが、必要不可欠であると考えております。

同様に、環境負荷物質の管理・低減や、廃棄物の低減、リサイクルの推進といったことも、重要であります。管理体制の構築・強化や、環境関連技術の開発、普及などにおきましても、国家レベル、企業レベル、あるいはNPOなどの草の根レベルでの交流と協力を進め、日中両国の連携を深めていく必要があるものと思います。

(おわりに)

 さきほどから繰り返し申し上げておりますように、私はこれからの日本経済、日本社会が新たな発展を遂げていくためには、「多様性のダイナミズム」を生かしていくことが、ぜひとも必要であると考えております。アメリカのシリコンバレーにみられるような、異なる価値観を持つ多様な人たちがともに働き、生活することで互いに刺激を与え合い、そこから活力や創造性、独創的な発想が生まれてくるダイナミズムが必要なのであります。

 それにあたって重要なことは、多様性のダイナミズムを支えるのは「共感と信頼」であり、人々の心のなかに、多様性な価値観を受け入れる寛大さが存在することであります。すなわち、他者が自分と異なるものを求め、生きていることを理解し、尊重する、骨太な人間観であります。

 これは、口にするのはたやすいことですが、現実には非常に難しいことであります。私どもの会社でも、中国の自動車雑誌に掲載された、中国産のトヨタ車である「ランドクルーザー」と「ランドクルーザープラド」の広告がきっかけで、中国の読者のみなさんに不愉快な気持ちを与えてしまうという経験をいたしました。

これにあたりましては、即時に広告の掲載を取りやめるとともに、謝罪広告を掲載するなどの措置をとりましたが、私自身も、中国のみなさん、あるいは海外のみなさんの考え方や気持ちを理解することの難しさをあらためて痛感し、深く反省したところであります。

 日本人からみますと、中国のみなさんは隣人であり、外見も日本人と共通するところが多いせいもあってか、ついつい、ものの感じ方や考え方いったことまで、日本人と似ているのではないかと思い込んでいるきらいがあると思います。こうした思い込みが、時として誤解や行き違いを生む
原因にもなっていると思います。場合によっては、それが両国の良好な関係を構築していく上において微妙な摩擦の材料になりかねないとすれば、残念なことであります。

 現実には、外見はどうあれ、中国の人たちと日本人とは、考え方や価値観に異なる点もいろいろあることを、お互いにしっかり認識することが必要であると思います。その上で、違いを認めあい、尊重しあうことが、本当の意味での相互理解ではないかと思います。そして、冒頭にも申し上げましたが、その最初の一歩が、双方にお互いをよく知る有識者を増やしていくことであります。

 これはまさに、両国の間に「共同知」を構築していくことに他なりません。
これはもちろん、あらゆる国にあてはまることでありますが、私はとりわけ日中関係においてはその重要性が高いと考えております。 私たちは、本日のテーマであります「日中共同知の構築」の実現に向けて、あらゆる局面において、行政、研究者や研究組織、企業、非営利団体、あるいは個人といったさまざまなレベルでの交流に取り組み、共同知を積み上げていく必要があると思います。

もちろん、その推進にあたっては、双方に過度な負担とならないように配慮することが必要でありまして、そういう意味では私は、現在日中間に存在するさまざまな交流団体は、必要に応じて適切なあり方をとっていく必要があるのではないかと考えているところであります。

 このたび1周年を迎えられた日本華人教授会議が、今後ますますの発展を遂げられ、日中関係の健全な発展に大きな貢献をなされることを心よりお祈り申し上げまして、私のお話を終わらせていただきたいと思います。 ご静聴ありがとうございました。